2011年03月

牢屋でやせるダイエット (青春文庫)牢屋でやせるダイエット (青春文庫)
著者:中島 らも
青春出版社(2005-06-09)
販売元:Amazon.co.jp
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中島らもの著作を初めて読んでみた。大麻取締法違反での拘置所における20日ほどの拘留(言葉の使いかた、これでいいのかな?)と、その後の裁判の判決までの記録。

あくまで淡々として客観的な筆致であり、独房のなかでの不安やいらだちなども素直に書かれているのだけれど、その自分と周囲を見つめる目は冷静で明晰であり、読み終わったあとに、犯罪を犯した人間の獄中記であったということを忘れさせる。たまたま取り上げた題材が「麻薬」であり「犯罪」であったというだけで、そこから引き出される考察は、善と悪のどちらにも染まらない、無色透明の蒸留酒みたいなものだ。なんだかそれがおかしくて、笑ってしまうところもいくつもある。

この一文が特に気に入った。

思想についても考えた。結局、おれは思想というものを否定した。思想というものは「砦」であり、連中はその中でぬくぬくと眠っている。囚人の囚という字は口の中に人と書くが、思想だってそれと同じことだ。

思考回路とその出口が鍛え上げられている人の文章というのはとても頭をすっきりさせる。僕なんかはその出口を求めて、一生さまよっておしまいなのだと思う。


ヤナーチェク:歌劇「利口な女狐の物語」ヤナーチェク:歌劇「利口な女狐の物語」
アーティスト:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 マッケラス(サー・チャールズ)
ユニバーサル ミュージック クラシック(2008-05-21)
販売元:Amazon.co.jp
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ヤナーチェクに興味があったし、チェコ語のオペラというのはどんなものだろうなと興味があって図書館で借りてみた。

内容は、ビストロウシュカという小さい女狐が人間につかまって、逃げて、恋をして、殺されて、それを思い出している男が、ビストロウシュカにそっくりな女狐をまた発見して「おや?君はビストロウシュカの子供かい?」みたいな内容。カエルやフクロウ、イヌ等動物がたくさん出てくるのも面白いし、常套句に頼らない自然描写も美しい。生命の輪廻みたいなものを表現したかったのかもしれない。

解説書によると「ビストロウシュカ」という固有名詞が「ずるがしこい」みたいな意味であり、正確には「ビストロウシュカ(振り仮名「ずるがしこい」)の物語」という訳が正解に近いだろう

結果。かなり面白い。ただし対訳を見ないと訳分からないと思う。おとぎ話っぽい内容だけれど、近代の音楽なので音楽はすぐにすーっと耳に馴染んでくるわけではない。

印象的なのは、第二幕の第四場。たゆたうようなヴォーカリーズが自然の静寂を讃える音楽の後に、一匹の男狐がビストロウシュカの前に現れる。そして二人(二匹?)は言葉を交わし合い、少しずつ恋に落ちてゆき、最後にはふくろうの神父のもとに結婚を誓う。冒頭のヴォーカリーズがオーケストラと共に再現され、まるで森全体が力強く呼応し、二人を盛大に祝福しているようだ。粗野なメロディであることでさらに劇的な効果が上がっている。胸が熱くなる。

男狐はメゾ・ソプラノであり、その絶妙な言葉のやり取りは、まるでばらの騎士のゾフィーとオクタヴィアンである。ヤナーチェクはこのころ、一人の女性に恋しており、生涯文通でその愛をはぐくんだのだけれど、この場面に(台本もヤナーチェクである)その気分を認めることは間違いじゃだろう。子供のように純粋な恋への憧れに満ちており、ちょっと恥ずかしいくらいだ。「わたしきれいかしら」なんて自問自答(しかも3回も)する乙女なんてそうそういるもんじゃない。音楽的にはヤナーチェクの個性は羽ばたいているけれど、この場面の台本は後期ロマン派の影響をモロ受けといった感じだ。いや、男ってのはいくつになってもロマンチストなのかもしれない。

そして、もうひとつ印象的なのは、3幕の最後、猟場番(森番)の「言ってなかったかな、俺はあの事を」のモノローグである。このあたりも、ワーグナー/シュトラウスの影響を受けていると言えるかもしれない。猟場番が自分のぱっとしない人生を振り返り、そして「生」というもの不思議さを歌いあげ、そして眠りに落ちる。

しかしここの音楽は神秘的で感動的だ。ヴァイオリンのかなり高いところを使うためか、さすがのウィーン・フィルも少し美感を損なっているけれど、仕方ない。この記事を書くにあたり、ちょっとウィキペってみたのだけれど、ヤナーチェク自身もこの部分を自分の葬式で演奏してほしいと思っていたらしい。

この曲におけるウィーン・フィルの素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。僕はどうも、ウィーン・フィルというオーケストラが苦手だけれども、やはり彼らが本気を出すと「ものすごい」のだなと思う。未知の曲だから真剣に取り組んだというのもあるのかもしれないけれど。こういう演奏ならお金を出してコンサートにも行きたいと思う。しかし、彼らは手を抜くのを僕は知っている。だから行きたくないのだ。

そういえば、ショルティが指揮したシュトラウスのオペラも同じような気合いの入った音がした。そんな意味で、このヤナーチェクのチクルスを完成させたマッケラスという指揮者も、たいそうウィーン・フィルに嫌われたに違いない(笑)。でも、こうでもしないと値段相応の価値にはならないだろう(図書館で借りたくせにエラソーに)。

そいて、ビストロウシュカのルチア・ポップ。これはベスト・キャスティングに違いない。彼女の色気をあまり感じさせない、どこか抜けた感じのキャラクターは、女狐という役柄にぴったりと思う。さらにもまして、エヴァ・ランドヴァの男狐もポップ以上にすばらしい。「雪渡り」という童話で、ちょっと気取った狐が出てくるのだけれど、そんなちょっと背伸びをした男狐を見事に演じきっている。本当に、このキャラクター設定はゾフィーとオクタヴィアンそのものだ。

録音も、一部、歪みがあるのは残念だけれど(デジタルだからといって歪みがないと考えるのは間違い。デジタルだからこそ歪みやすくなっている)、デッカらしい鮮明さが気持ちがいい。

しかし、最後に、結局この問題に立ち返ることになる。言語の抑揚に即したオペラ、いわゆる朗唱風のオペラというのは、はたして音楽と言えるのだろうか?これらのオペラは未来の通俗を先取りしているのだろうか?難しい問題だ。

作曲家 人と作品 ワーグナー (作曲家・人と作品)作曲家 人と作品 ワーグナー (作曲家・人と作品)
著者:吉田 真
音楽之友社(2004-12-01)
販売元:Amazon.co.jp
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最近ワーグナーにハマりつつある。なので、図書館で借りてザーッと読んでみた。面白かったねぇ。今現在でも、ワーグナーの音楽や一族は社会的に影響力を持っているのだから、とんでもない話だな。

この本を読む前のワーグナーの印象というのは、傲慢で、偏屈で、理論偏重で、音楽と同時に政治の手腕にも長け、そして色欲にまみれた人生を過ごしたオヒト…。

でも、ワーグナーの音楽に親しむにつれて、なんかだんだんそういう先入観も「違うんじゃないかなぁ」と思うようになってきた。

たとえば、理論偏重と言うけれど、ワーグナーの音楽は聞けば聞くほど、極めて平明な印象を与える。ワーグナーの音楽にはクラシックのポピュラーなメロディがたくさん含まれている。第一、ライトモチーフという発想自体、平明さを保ちながら単調さ防ぐためのワーグナーなりの工夫だったのではないだろうか。

余談だけれど、それに比べると、後輩のR・シュトラウスの方がよほど理屈っぽいし、小難しいし、そしてワーグナーと大いに違うのは、彼には美しいメロディを書く才能が欠如していたように思えるところだ。メロディを書けない人間はやはり理論の順列組み合わせに頼るしかないのだろう。和声を限界まで押し進めたのはワーグナーではなくて彼のような気がする。

話を戻して、「ジークフリート牧歌」のような愛らしい作品を、傲慢な人間に賭けるものなのだろうか。

そして、この伝記を読んでみた。脚色されない(逆にそこに強い意図を感じる部分も大いにあるのだけれど)さらっとした読み物であり、面白かった。

この本を読んでまず思ったのは、やはりとてつもなく努力家だということ。人生に常について回った借金によく耐えて作曲を続けたなぁと思う。

そして、音楽というよりは、劇というものに重きを置いていた作曲家だったのではないかということ。生い立ちからして、そういうものを感じるし。だから、意外と音楽に関してはそこまで強いこだわりというのはなかったのではないかと(実際は違うかもしれないが)思ってしまったこと。だからこそ、常識を打ち破れたのかもしれないということ。

そして、恋愛も意外にまじめだったということ。一番最初の奥さんと何度も関係を修復しようと試みていたところなど、自分が抱いてたワーグナー像とずいぶん違う。「トリスタンとイゾルデ」は不倫の恋が作曲の契機となったとするのが定説だけれど、本書ではその説に疑問を投げかけている。確かに、恋が成就していないからこそ好き勝手にロマンスが膨らませられるのではないだろうか。

想像力と言えば、彼はあまりうまくないピアノしか楽器は弾けなかった。そしてオーケストレーションの勉強をしたという記述はない。それなのに、ワーグナーの豪快なオーケストレーションというのは今も昔も人の心を捉えてやまない。やはり、これも結局は想像力のたまものなのではないか。ラヴェルも管弦楽法の魔術師と言われているけれども、彼のオーケストラ作品の代表作も「ピアノ曲の編曲」がほとんどなのだから。

まとまりませんが、これで終わります。

クレオフーガで私の歌う「○ウンワークの歌〜結局儲かるのは○クルート」という歌が公開中です。だからなに?と言った感じですがよろしかったらどうぞ。

▼「○ウンワークの歌〜結局儲かるのは○クルート」▼
http://creofuga.net/songs/6132

この曲もいろんな人にヒントとインスピレーションをもらいました。以下の方々に感謝します。

弱つよむ、痴音ミク、the beach boys、SUPER CHIMPANZEE、美輪明宏、モモコ、エルヴィス・プレスリー


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