2011年03月


ヤナーチェク:歌劇「利口な女狐の物語」ヤナーチェク:歌劇「利口な女狐の物語」
アーティスト:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 マッケラス(サー・チャールズ)
ユニバーサル ミュージック クラシック(2008-05-21)
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ヤナーチェクに興味があったし、チェコ語のオペラというのはどんなものだろうなと興味があって図書館で借りてみた。

内容は、ビストロウシュカという小さい女狐が人間につかまって、逃げて、恋をして、殺されて、それを思い出している男が、ビストロウシュカにそっくりな女狐をまた発見して「おや?君はビストロウシュカの子供かい?」みたいな内容。カエルやフクロウ、イヌ等動物がたくさん出てくるのも面白いし、常套句に頼らない自然描写も美しい。生命の輪廻みたいなものを表現したかったのかもしれない。

解説書によると「ビストロウシュカ」という固有名詞が「ずるがしこい」みたいな意味であり、正確には「ビストロウシュカ(振り仮名「ずるがしこい」)の物語」という訳が正解に近いだろう

結果。かなり面白い。ただし対訳を見ないと訳分からないと思う。おとぎ話っぽい内容だけれど、近代の音楽なので音楽はすぐにすーっと耳に馴染んでくるわけではない。

印象的なのは、第二幕の第四場。たゆたうようなヴォーカリーズが自然の静寂を讃える音楽の後に、一匹の男狐がビストロウシュカの前に現れる。そして二人(二匹?)は言葉を交わし合い、少しずつ恋に落ちてゆき、最後にはふくろうの神父のもとに結婚を誓う。冒頭のヴォーカリーズがオーケストラと共に再現され、まるで森全体が力強く呼応し、二人を盛大に祝福しているようだ。粗野なメロディであることでさらに劇的な効果が上がっている。胸が熱くなる。

男狐はメゾ・ソプラノであり、その絶妙な言葉のやり取りは、まるでばらの騎士のゾフィーとオクタヴィアンである。ヤナーチェクはこのころ、一人の女性に恋しており、生涯文通でその愛をはぐくんだのだけれど、この場面に(台本もヤナーチェクである)その気分を認めることは間違いじゃだろう。子供のように純粋な恋への憧れに満ちており、ちょっと恥ずかしいくらいだ。「わたしきれいかしら」なんて自問自答(しかも3回も)する乙女なんてそうそういるもんじゃない。音楽的にはヤナーチェクの個性は羽ばたいているけれど、この場面の台本は後期ロマン派の影響をモロ受けといった感じだ。いや、男ってのはいくつになってもロマンチストなのかもしれない。

そして、もうひとつ印象的なのは、3幕の最後、猟場番(森番)の「言ってなかったかな、俺はあの事を」のモノローグである。このあたりも、ワーグナー/シュトラウスの影響を受けていると言えるかもしれない。猟場番が自分のぱっとしない人生を振り返り、そして「生」というもの不思議さを歌いあげ、そして眠りに落ちる。

しかしここの音楽は神秘的で感動的だ。ヴァイオリンのかなり高いところを使うためか、さすがのウィーン・フィルも少し美感を損なっているけれど、仕方ない。この記事を書くにあたり、ちょっとウィキペってみたのだけれど、ヤナーチェク自身もこの部分を自分の葬式で演奏してほしいと思っていたらしい。

この曲におけるウィーン・フィルの素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。僕はどうも、ウィーン・フィルというオーケストラが苦手だけれども、やはり彼らが本気を出すと「ものすごい」のだなと思う。未知の曲だから真剣に取り組んだというのもあるのかもしれないけれど。こういう演奏ならお金を出してコンサートにも行きたいと思う。しかし、彼らは手を抜くのを僕は知っている。だから行きたくないのだ。

そういえば、ショルティが指揮したシュトラウスのオペラも同じような気合いの入った音がした。そんな意味で、このヤナーチェクのチクルスを完成させたマッケラスという指揮者も、たいそうウィーン・フィルに嫌われたに違いない(笑)。でも、こうでもしないと値段相応の価値にはならないだろう(図書館で借りたくせにエラソーに)。

そいて、ビストロウシュカのルチア・ポップ。これはベスト・キャスティングに違いない。彼女の色気をあまり感じさせない、どこか抜けた感じのキャラクターは、女狐という役柄にぴったりと思う。さらにもまして、エヴァ・ランドヴァの男狐もポップ以上にすばらしい。「雪渡り」という童話で、ちょっと気取った狐が出てくるのだけれど、そんなちょっと背伸びをした男狐を見事に演じきっている。本当に、このキャラクター設定はゾフィーとオクタヴィアンそのものだ。

録音も、一部、歪みがあるのは残念だけれど(デジタルだからといって歪みがないと考えるのは間違い。デジタルだからこそ歪みやすくなっている)、デッカらしい鮮明さが気持ちがいい。

しかし、最後に、結局この問題に立ち返ることになる。言語の抑揚に即したオペラ、いわゆる朗唱風のオペラというのは、はたして音楽と言えるのだろうか?これらのオペラは未来の通俗を先取りしているのだろうか?難しい問題だ。

クレオフーガで私の歌う「○ウンワークの歌〜結局儲かるのは○クルート」という歌が公開中です。だからなに?と言った感じですがよろしかったらどうぞ。

▼「○ウンワークの歌〜結局儲かるのは○クルート」▼
http://creofuga.net/songs/6132

この曲もいろんな人にヒントとインスピレーションをもらいました。以下の方々に感謝します。

弱つよむ、痴音ミク、the beach boys、SUPER CHIMPANZEE、美輪明宏、モモコ、エルヴィス・プレスリー


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